2026.03.25

NEWS

雑誌スマイラー117号「大自然」



上野・蕎麦の名店が、鮮魚と日本酒で織りなす、
季節感あふれる和食処に!


食材を生かし、お客様を驚かせたい ー 和食の新境地を追求

「食材をとにかく生かしている」——そう語るのは、今回取材させていただいた「大自然」店長の小野嘉之氏だ。豊洲市場から直接仕入れる新鮮な魚介と、厳選された日本酒を軸に、独自の料理哲学を貫いている。


縁に導かれた理想の立地

この店舗を始めた理由を伺うと、「彼がやりたいと言った。店長がやりたいと」と社長の小河誠氏は笑顔で答える。物件選びについては「十駒の近くなら、どこでも良かった」と語りながらも、「ご縁ですよね、こことの」と続ける。「十駒」とは社長が雷門で営んでいる小料理屋だ。
元々蕎麦の名店が居抜きで売りに出された時、100人ほどの希望者が殺到したという人気物件だった。その中で小河社長が選ばれたのは、社長とお店の前オーナーが銀座で行われた「古武道(チェロとピアノと尺八の演奏会)」で出逢い、藤原道山氏の尺八演奏の感想で意気投合して食事へ出掛けた仲だったからで、「尺八」が取り持つご縁があったからかもしれない。お店のオープニングレセプションでは、前オーナーに尺八を演奏して頂いたという。


豊洲直送、泳いでいる魚を即座に調達

豊洲直送の活魚を調達することから、この店の一日は始まる。社長が市場に向かい、“泳いでる魚”をその場で〆て貰って買ってくるのだ。店に持ち帰った魚は「まだ心臓がピクピク動いてる感じ」だという。
多くの飲食店が冷凍や養殖に頼る中、なぜそこまで鮮度にこだわるのか。「食材をとにかく生かしている」—この一言に、すべてが込められていた。
仕入れの基準は明確だ。「旬ですね。旬で天然なことですね」。信頼のおける卸業者との長年の関係を生かし、その日の最高の魚を目利きしてもらう。産地よりも、その日に買える魚の鮮度と品質を最優先にしている。
社長は仕入れた魚の“声”を聞き最も美味しい状態でお客様に提供する、時には30時間寝かせる場合もある「今日買ってきてすぐ食べるより、30時間後が美味しい魚も有る」。これは長年の経験から導き出した、社長だけの熟成理論だ。


千葉の地酒への深いこだわり

日本酒については、特に千葉の酒に注目している。
「千葉の酒がすごく美味しくなってきた」と店長は目を輝かせる。
「千葉のお酒といっても海沿いの場所によって味わいが違いますし、川沿いの場所によっても個性が違います。その違いの楽しさっていうんですか?水のうまさっていうんですか?そこの美味しさが変わってきているから、今千葉に力を入れてるんです」。
大手の有名銘柄を勧めれば売れるのに、なぜ千葉にこだわるのか。
商売として効率的ではないかもしれない。でも、自分が本当に美味しいと思うものを、お客様と共有したい。店長は「全体的にバランスが良くなってきた千葉の酒を応援したい」と話す。そこに偽りはない。
また、「女性杜氏が増えてきているのは間違いない」と、業界の変化についても言及。女性杜氏が造る酒の「優しい感じの味わい」と料理とのペアリングにも、季節の野菜やオリーブオイルを使いながら積極的に取り組んでいる。


季節感を大切にした「驚き」の演出

「僕はいつも驚かしたいんです!」——これが「八芳園・壺中庵」出身の店長の料理に対する根本的な考え方だ。
これからの季節の注目は「キノコ」「栗」「松茸」といった秋の味覚。特に「サンマの1本唐揚げ」に南蛮だれをかけた一品は、「他では出した事がない」自信作だという。
名物の「はまぐりラーメン」は、和食店だからこその味わいだ。
また季節感の演出にも余念がない。「お金をかけずに自分で毎日取りに行ったりします」と語る通り、近くの河原で紅葉や松葉などを採取し、料理の飾りとして活用している。コストをかけた派手な演出ではない。自分の足で、自分の目で、季節を見つけてくる。その姿勢こそが、本当の「おもてなし」なのかもしれない。

「それが一番ポリシーじゃないですかね」と語る季節感への配慮は、器の選択にも表れる。「夏は夏でやっぱり大きなお皿の広い所に、隙間を作って盛り付けるのが涼しげに見える」と、同じ料理でも季節によって盛り付けを変える細やかさだ。


「お通し」に込められた覚悟

取材の終盤、店長が「思い出しました」と語ったのが、お通しへのこだわりだった。最初に提供するお通しには特別な思い入れがある。「昔からそうなんですけど、お通しだけはインパクトがある様に、一番こだわっています。そこでお客様の驚きを掴んだと感じるんです。」
お通しは、多くの店では「とりあえず」出すもの。でも、ここでは違う。店の印象を決める、最初で最後のチャンスだと捉えている。


思いがあるから、続けられる

この地域は「お酒を飲んでも、食事をする方が多い」のが特徴だと店長は分析する。「ご飯を食べる方がとにかく多いんですよ」と語る通り、天ぷらとご飯をメインに、その前にお酒とつまみという流れが定着している。また、浅草に近いという立地から海外からの観光客も多く、「寿司とかそういう日本のもの」を求める外国人客への対応も行っている。

取材を終えて改めて感じたのは、この店長の言葉だった。
「たぶん自分の思いみたいなものがないとお店って続かない」

食材への敬意、季節感への配慮、そして何より「お客さんを驚かせたい」という純粋な思い。これらがこの店が多くの人に愛される名店であり続ける理由だろう。

取材先

株式会社 大自然
「大自然 上野店」
〒110-0014 東京都台東区北上野2-1-14
03-5938-8624

代表取締役 小河誠 様(写真中央)
店長 小野嘉之 様(写真右)